胃腸科とは
口から肛門までは一本の長い管でつながっていて、その長さは9mほどと言われています。その中には、様々な働きをする臓器があるわけですが、胃や大腸を中心に専門的に診療していくのが胃腸科です。主に腹痛、嘔吐・吐き気、下痢、血便などの症状を訴える患者さんに対して診療を行っていきます。このほか、ピロリ菌に感染している疑いがあるという場合も当診療科をご受診ください。
胃カメラ(胃内視鏡検査)をオススメしたい方【要予約】
- 40歳以上の方
- 胃痛、吐き気、胸やけ、不快感がある
- 喉につかえ感がある
- 胃がん・食道がんの家族がいる
- 黒色の便が出る
- 健康診断で精密な検査が必要と言われた
- ピロリ菌の感染が疑われる・感染したことがある
40歳を過ぎたら症状がない場合でも、年に1回の定期的な検査をおすすめします。
熊本市がん検診の対象者や費用は熊本市の公式HPをご覧ください。
苦痛の少ない胃カメラ検査を心掛けています
消化器内視鏡学会専門医・指導医による検査を行っております。苦痛を軽減するため、軽い鎮静剤を使用しております。当院の胃カメラは、高性能なカメラを搭載しており、食道、胃、十二指腸の内部をより鮮明に確認することができます。
大腸カメラ(大腸内視鏡検査)をオススメしたい方
- 40歳以上の方
- 下痢や便秘に悩んでいる
- 便が細い・便に血が混じる
- 大腸がんの家族がいる
- お腹が張っている・痛む
- 健康診断で精密な検査が必要と言われた
- 大腸ポリープを切除したことがある
苦痛の少ない大腸カメラ検査を心掛けています
消化器内視鏡学会専門医・指導医による検査を行っております。大腸カメラは、肛門から逆流していく形で内視鏡を挿入していきます。苦痛を軽減するため、軽い鎮静剤を使用しております。
消化器科とは
消化管の中で構成されている、口腔から肛門までの器官(主に食道、胃、十二指腸、小腸、大腸 等)と、その消化管をサポートする肝臓、胆道、膵臓で起きた症状や病気に対して、診察、検査、治療を行っていく診療科になります。胃腸科と消化器科とありますが、どちらも消化管の異常について診ていくことになるので、重なる部分も多いです。そのため、胃腸科と同様に胸やけ、腹痛、酸っぱいものが込み上げる、便通異常(下痢、便秘)、黄疸(肌が黄色っぽい 等)、嘔吐・吐き気、血便(赤や黒い便)などの症状の患者さんが対象となります。
また肝臓の病気は、症状が出にくいので放置しやすく、気づいた頃には病状がかなり進行していたというケースも少なくありません。したがって、定期的に健康診断をした際の血液検査から肝機能の数値を確認するなどして、数値の異常を指摘されたら自覚症状がなくても一度消化器科をご受診ください。
以下のような症状があればご相談ください(例)
※胃腸科・消化器科とも
- 慢性的にお腹の調子が悪い
- 胃もたれに悩んでいる
- 胸やけの症状がある
- いつも便秘気味である
- 便に血が含まれている(血便がある)
- 食欲不振
- 顔色が悪いとの指摘を受けた
- 胃痛がある、繰り返している
- 吐き気がみられる
- 食後に背部痛が出る
- 下痢を度々起こしている
- 皮膚や粘膜が黄色っぽい(黄疸)
- 体重が急激に減少した
胃腸科・消化器科で扱う主な疾患
急性胃炎
何の前触れもなく、胃の粘膜に炎症が発症している状態が急性胃炎です。発症原因は様々あるとされ、暴飲暴食、薬(NSAIDsなどの鎮痛解熱剤、ステロイド薬 等)の副作用、ストレス、多量のアルコール、ピロリ菌やアニサキスの感染などが挙げられます。
主な症状は、胃やみぞおちに痛み、胃もたれ、嘔吐・吐き気、胃部の膨満感などで、症状がさらに進行すれば、吐血・下血がみられるようになります。
治療に関してですが、原因が特定していれば、まずそれを取り除くことをしていきます。例えば、薬の使用を中止する、食生活を見直す、ストレスに対処する、アルコールの飲み過ぎなら節酒をする、ピロリ菌に感染していれば除菌治療をする、などです。また出血がみられている場合は、内視鏡による止血処置も行います。このほか、症状の程度によっては、薬物療法として、胃酸の分泌を抑制する薬、胃酸を中和する薬、胃粘膜を保護する薬などが効果的です。
胃・十二指腸潰瘍
胃や十二指腸の粘膜が損傷し、ただれるなどして、さらに深い傷(潰瘍)になっているのが、胃潰瘍もしくは十二指腸潰瘍です。発症の原因としては、ピロリ菌(ヘリコバクター・ピロリ)の感染が大半とされていますが、薬剤(NSAIDs 等)の副作用、喫煙、ストレスなども挙げられます。元々胃内は、強力の酸性下にあるので、粘膜もそれに対するコーティングをされているわけですが、上記の原因によってコーティングが崩れてしまうことで、胃酸等によって粘膜が傷ついて発症するようになります。主な症状は、みぞおち周辺の痛み、吐き気・吐血、潰瘍からの出血、黒色の便が出る、腹部膨満感、貧血などです。なお潰瘍が悪化した場合は、胃や十二指腸に孔が開くこともあります(胃穿孔、十二指腸穿孔)。
治療に関してですが、薬剤の副作用が原因であれば投与を中止します。またピロリ菌の感染が原因であれば速やかに除菌治療(薬物療法)を行います。このほか、医師が必要と判断した場合は、胃酸の分泌を抑制する薬を使用していきます。なお、出血がある場合は内視鏡による止血術、穿孔があれば手術療法を行うこともあります。
ピロリ菌感染症
ヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)と呼ばれる細菌に感染している状態をピロリ菌感染症と言います。そもそも胃の中は、強力な酸性下にあるので細菌などの生物が棲みにくい環境にありますが、ピロリ菌は成長途上にある幼児期に胃内に入り込み、胃内にある尿素をピロリ菌自体がアンモニア(アルカリ性)と二酸化炭素に分解し、アンモニアによって胃酸を中和させることで生き長らえるようになります。感染経路については、ピロリ菌に感染している成人から子どもへの食べ物の口移しによる感染が有力とされています。
感染したからといって、すぐに何らかの症状が現れる、胃潰瘍や胃がんを発症するということはありませんが、胃粘膜に炎症を引き起こすようになります。これが慢性的に続くと粘膜が傷つきやすくなって、胃・十二指腸潰瘍、胃がんなどの病気を引き起こすリスクが高まるようになります。
感染の有無については、内視鏡で胃の組織(粘膜)を一部採取して詳細を調べる検査(培養法、迅速ウレアーゼ法、組織鏡検法)と内視鏡を使用しない検査を行うことで判定していきます。その結果、感染している場合は、速やかに除菌治療を行います。この場合、1週間限定の薬物療法を行い、同治療を終えた4週間後に除菌判定の検査をしていきます。除菌に失敗した場合は、薬物療法の組み合わせを代え、再び一週間限定の除菌治療(二次除菌)を行い、治療終了から4週間後に除菌判定検査をいたします。
逆流性食道炎
胃酸を含んだ胃液や胃内の消化物が食道へ逆流してしまうことで、食道の粘膜に炎症や潰瘍(ただれ)がみられている状態を逆流性食道炎と言います。この場合、同疾患によってバレット食道を引き起こすようになると食道がんを発症する可能性が上昇するようになります。主な症状は、胸やけ、呑酸(苦みや酸っぱさが込み上げる)、胸痛、咳、声がれなどです。
発症の原因については、食道と胃の間にある下部食道活括約筋の機能低下による緩みや胃酸の過剰分泌が挙げられます。ちなみに食道は、胃のように粘膜が強い酸性下でも耐えられる構造になっていないので、胃酸を含む胃液によって粘膜が損傷し、炎症や潰瘍(ただれ)が起きるようになります。なお、下部食道活括約筋が緩む原因としては、高脂肪食やカフェインの過剰摂取、ベルトなどで腹部を強く締め付ける、加齢による同筋力の低下、食道裂孔ヘルニアなどが挙げられます。
治療をする場合、胃酸を抑制する薬(プロトンポンプ阻害薬、H2ブロッカー 等)を使用していきますが根治させる治療法ではありません。このほか、食べ過ぎない(胃酸を必要以上に分泌させない)、食べたらすぐに横にならないなど生活習慣の見直しも必要です。
食道裂孔ヘルニア
人には横隔膜と呼ばれる胸とお腹を隔てる膜が存在しています。その膜の隙間(食道裂孔)に胃の一部が入り込んでしまうことで、胃からの逆流を防ぐ働きのある下部食道括約筋が緩むなどして、胃の中の内容物などが逆流してしまい、食道炎を引き起こすようになります。これを食道裂孔ヘルニアと言います。よくみられる症状は、胸やけ、呑酸、胸痛、飲み込みにくさを感じているなどです。
発症しやすいタイプとしては、肥満体型の方、加齢による食道裂孔の緩み、喫煙者、慢性的に咳の症状が続いていて、常に腹部の圧力が高い状態にある方、先天的に食道裂孔が緩い方などが挙げられます。また先に述べた症状が続いている場合も発症している可能性がありますので、心当たりのある方は速やかにご受診されるようにしてください。
治療に関してですが、逆流性食道炎の症状があれば、胃酸を抑制する薬を用いた薬物療法や胃液が逆流しにくい生活習慣(主に食生活)に努めるなどしていきます。
胃がん
胃の内壁(粘膜)より発生するがんになります。胃粘膜が損傷を受けることがきっかけとなります。発症の原因としては、ピロリ菌(ヘリコバクター・ピロリ)の感染による胃粘膜の損傷が最も多いとされていますが、喫煙、食生活の乱れ(塩分の過剰摂取、高脂肪食を好んで食べる 等)のほか、ストレス、遺伝子異常なども挙げられます。
胃がんは、発症初期は自覚症状が出にくいことでも知られています。ただ早期に発見できれば治りやすいがんでもあります(完全にがんを取り除くことができれば、治癒率は9割以上)。そのため、何の症状がなくても多くの自治体で胃がん検診の対象となる40歳を迎える頃には、定期的に受診されることをお勧めします。なお、ある程度病状が進行するようになると、胸やけ、胃痛、食欲不振、吐き気、貧血などがみられるようになります。
治療をする場合ですが、基本は病変のある部分(がん細胞 等)の切除となります。早期であれば、内視鏡での切除が可能です。また、進行がんで遠隔転移がない、初期であっても発生部位や大きさによっては、手術療法(外科的治療)による切除となります。なお、進行がんで遠隔転移があれば手術は困難ですので、化学療法(抗がん剤)による治療となります。
食道がん
食道の粘膜より発生するがんを食道がんと言います。発症初期は自覚症状がないことから、病状を進行させやすくなります。また食道は、喉や肺、胃などの臓器やリンパ節が近くにあるため転移しやすい特徴もあるので、早期発見・早期治療が肝心です。
ある程度進行するようになると症状がみられるようになります。例えば、食物を飲み込む際のつかえ、胸部の違和感(しみる、痛み 等)などです。さらに病状が進行すると、体重減少、食欲減退、声のかすれ、胸背部痛などがみられるようになります。
発症の原因に関してですが、喫煙、多量の飲酒、逆流性食道炎がきっかけのバレット食道、熱い飲食物を好んで食べるといったことがリスク因子として挙げられます。また男性の患者数が圧倒的に多く、女性患者さんの6倍程度とも言われています。
治療に関してですが、早期がん(粘膜下層に達していないケース)であれば、内視鏡を用いたがん細胞の切除になります。進行がんの場合は、外科的治療(手術療法)のほか、化学療法、放射線療法を組み合わせる治療法が行われます。
大腸がん
大腸がんは、大腸の粘膜に発生するがんになります。発生する部位によって、直腸がん(直腸~肛門の間に発生するがん)、結腸がん(盲腸~S状結腸の間に発生するがん)などと診断されますが、発症しやすい部位は、S状結腸と直腸です。この大腸がんに関しては、良性ポリープである腺腫が悪性化することでがんになるタイプと、粘膜から発生するタイプがあります。
原因については、完全に特定してはいませんが、このがんは欧米人に発生しやすく、また日本人の患者数が、以前と比較して増えていることから、食の欧米化(肉中心の食事、高脂肪食)などが関係していると言われています。発症の傾向としては、50代を超えてから罹患している患者さんが増えていくので、これまで大腸に何の症状もないという方であっても、50歳を迎える頃からは、定期的に大腸がん検診を受けられるようにしてください。
主な症状ですが、初期の頃に自覚症状がみられることはほぼなく、病状が進行していくことで、血便、腹痛、下痢と便秘を繰り返す、腹部膨満感、体重減少、貧血などの症状がみられるようになります。
治療に関しては、がん細胞の切除が基本となります。病期や発生部位、大きさによって、内視鏡による切除もあれば、手術療法になることもあります。転移を確認し、手術では取り切ることが困難と医師が判断した場合は、化学療法や放射線療法を行っていきます。
大腸ポリープ
大腸の粘膜に発生するいぼのような形をした突起物のことを大腸ポリープと言います。種類としては、腫瘍性と非腫瘍性に分けられ、腺腫とも呼ばれる腫瘍性は、その大部分が良性の腫瘍なのですが、一部に遺伝子変異が起きるなどして、がん化する可能性もあります。また非腫瘍性ポリープには、高齢者によく見受けられる過形成性ポリープ、腸炎発症後に発生する炎症性ポリープ、小児に発生しやすい若年性ポリープなどがあります。これらはいずれもがん化することは、ほぼないとされています。
ちなみにポリープの状態であれば、がん化していたとしても粘膜内だけでみられているのであれば転移の可能性はないとされています。ただポリープの状態を通り越して、粘膜下層までがんが浸潤していると腸管を切除する外科手術が必要となります。
主な症状ですが、自覚症状は、ほぼないとされています。病状が進行すれば出血がみられるようになるとされていますが、その量は少ないことが多いので、気づかないこともよくあります。
治療については、5mm以上のポリープが確認されると切除の対象となります(5mm以下では経過観察になることが多い)。それほど大きくなければ内視鏡による切除が可能ですが、大きい場合は手術による切除が行われます。
炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎・クローン病)
小腸あるいは大腸に炎症や潰瘍が発症するものの原因を特定することができない病気のことを炎症性腸疾患と言います。この場合、潰瘍性大腸炎やクローン病が同疾患に含まれます。
潰瘍性大腸炎は、主に免疫異常によって慢性的に大腸の粘膜に炎症(びらん、潰瘍)が起きると言われますが、なぜ免疫異常が起きるかについては、わかっていません。炎症によって、腹痛、下痢(血が混じりやすい)、体重減少などの症状がみられるようになります。また同疾患は、炎症の程度によって4つのタイプ(直腸炎型、遠位大腸炎型、左側大腸炎型、全大腸炎型)に分類されます。
主に10代後半~30代前半で発症するため、長期に渡って続くことが多く、大腸がんの原因になることもあります。
現時点で完治させる治療法はありません。そのため、炎症を治めるための治療法(寛解とそれを維持させるのが目的)として、免疫抑制薬などの薬や座薬による治療が行われます。状態によっては、外科治療が行われます。
またクローン病に関しては、消化管(口腔~肛門)のどの部位でも炎症や潰瘍が起こる可能性はありますが、主に小腸と大腸を中心に発症することが多いと言われています。原因は不明とされていますが、遺伝的要因や免疫反応などが関係しているのではないかと言われています。主な症状は、腹痛、下痢、全身倦怠感、発熱、体重減少などです。腸で発症した潰瘍が悪化すると腸穿孔、腸閉塞が起きるほか、腸以外でも関節や目に炎症、口腔内の浅い潰瘍、皮膚症状などの合併症がみられることもあります。
この場合も現時点で完治させる治療法はありません。栄養療法や薬物療法を組み合わせ(炎症の程度によって内容は異なる)、寛解の状態とそれの維持が目的となります。
その他の主な疾患
- 感染性腸炎
- 大腸憩室症
- 虫垂炎
- 腹膜炎
- 吐下血
- 過敏性腸炎
- 肝機能障害
- 胆石胆嚢炎
- 胆のうポリープ
- 胆のう腺筋腫症
- 腸閉塞
- 膵炎
- 膵肝腎のう胞